ダウン症者と認知症

Posted on 7月 27, 2011 by


ダウン症者は健常者に比べ、若くして認知症になるリスクが高いと言われています。
ダウン症者が年をとるにつれ、家族や介護者が抱える問題は大きくなると
今回取材したTVディレクターのティム・ロートンは語っています。

ダウン症の人々は以前よりも長生きになりました。
1980年代と比べると寿命は約二倍、60歳代にまで伸びています。

イギリスのダウン症者約60,000人を調査した結果、
ダウン症者は健常者に比べ認知症になるリスクが高いことが明らかとなりました。
しかも発症年齢は健常者に比べ、30~40年も早いのです。

シャーリーンは現在29歳。
6年前、認知症と診断されました。
ダウン症者に認知症発症の確率が高いことを知らなかった家族にとって、
シャーリーンが20歳代前半で認知症になったことは大変ショックな出来事でした。

シャーリーンの発症は同じダウン症者の中でも特に若い例ですが、
調査結果では発症リスクが年齢と共に劇的に増加する傾向が示されています。
50歳では約半分のダウン症者が認知症になる可能性があり
これは家族と福祉サービスに大きな負担になることを意味しています。

エジンバラ大学の研究者ダイアン・カーによると、
地方自治体は、いまだにダウン症者が長生きしないという誤った認識をもっているため、
彼らの高齢化に必要な準備ができていないと懸念しています。

認知症の最初の徴候は個性(人格)の変化です。
早期発見は、正しい治療を行うための重要な鍵。
それと同時に、認知症患者に必要な環境を
いち早く家族や介護者が準備するために重要となってきます。

イギリス北部のブラッドフォード。
ここに住むニコルはダウン症。姉のジャッキーと一緒に暮らしています。
ニコルの行動に変化が起こったのは52歳の時。
それに気づいた周囲の家族やデイケアサービスの人たちはとても心配しました。
年齢的にも、認知症の可能性が強く疑われました。

その後、ブラッドフォード地区の介護信託(Bradford District Care Trust)で認知症診断を受けるため、
現在ニコルにはソーシャルーワーカー(社会福祉士)が一人付いています。
ベイリス博士もまた、ニコルを診断する専門チームの一人です。
ニコルは認知症に似た他の疾患をもっており、
はっきりした診断結果までにはかなりの時間がかかります。

(前述の研究者)ダイアン・カーによると、
介護者の多くが、専門的な知識のある者ではなく
家族、あるいは普通の介護スタッフであるといいます。
「家族やスタッフというのは、自分たちの世界に認知症の人を連れて来ようとするのでなく、
認知症の人の世界を中心に考えてあげることができるのです」
そんな彼らの努力が、環境を良くするのだと考えます。

しかし、ダウン症者の標準的な介護に自宅介護の選択肢はありません。
自宅介護のほうがコストが掛からないにも関わらず、
老後は養護施設で過ごすのが通常です。

ダイアン・カーの調査結果では、これがベストな解決方法でないと結論づけています。

知的障害者の認知症介護は専門家のところよりも
(各自の個性に合った)独自の介護が必要であるという理解が進んでいないのが現状です。

イギリス国内ではダウン症と認知症の両方を充分に診れる施設はほとんどありません。
今後多くのダウン症者が認知症になると予想されるにもかかわらず、
適した環境が不足していて、施設のなかで生涯を終える人が増えることを専門家は指摘しています。

一方、ケンブリッジ大学の科学者は認知症を防ぐ方法を研究しています。
トニー・ホラント教授はアミロイドと呼ばれているタンパク質の研究に対し、
医療審議会から4年間の資金援助を得ました。

ダウン症の人々は脳内で異常に高い濃度のアミロイドを持っています。
ホラント教授はこれが原因でダウン症者に認知症が発症するのではないかと考えています。

研究によってタンパク質が要因であると判明すれば、
次に脳内で沈澱しているアミロイドの量を減らす方法を解明し、
ダウン症者の認知症を防止することにつながるでしょう。
さらにそれはアルツハイマー病とアミロイドの関係を解く鍵になるかもしれません。

医学の発達によって認知症が克服されなければ、
改善されつつあるダウン症者のクオリティ・オブ・ライフ (quality of life)が衰退していくのではないか。
そうダイアン・カーは懸念しています。
「もし私たちがダウン症の人々に何もしなければ、
彼らは年をとって認知症になり、
私たちが研究に費やした20、30年は意味がなくなります。
彼らは施設で化学療法を受けながら、ベッドのうえで過ごすしかないのです」
「成熟した社会とは弱者を支援できる社会である、というのを知っていますか?
けれど実際はどうでしょう。そうではないですね。
これは現場をみてきた私の、ある意味、告発です」

ニュースソース:More people with Down’s syndrome developing dementia

 



あわせて読みたい

  • ダウン症のある人の能力を見せるイランの壁画
  • ダウン症者のための最初の薬がテストフェーズへ
  • [絵本] ダンス教室に通う主人公の友達がダウン症の女の子(英語版)
  • 世界初!ダウン症者専門のモデル事務所
  • ダウン症薬、日本初の治験へ…生活能力低下を抑制
  • ▲先頭へ