”コンプレックス”か”強み”と捉えるかは紙一重。志村駿介さんが見つけた自分らしい生き方

Posted on 5月 15, 2018 by

 

必要は発明の母。家族がきっかけで何かを発明したり、新しいビジネスをはじめることは珍しくありません。

経営者として奔走する志村駿介さんは、かつてダウン症のある弟への想いから自分の軸を見つけました。

プロを目指すテニス選手から経営者へ。

株式会社Lean on Me 代表取締役社長、志村駿介さんにインタビューしました。

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ダウン症のある”きょうだい”ということですが、簡単に自己紹介をお願いします。
志村駿介
1990年3月2日生まれの28歳です。24歳のダウン症の弟がいます。
中学からテニスを始め、高校・大学と全国大会に出場し、アメリカへテニス留学もしました。
大学時代は保健体育の教員を目指していましたが、母子家庭で障がいのある弟がいる家庭環境を振り返った際に、「なにかあった際に助けてあげられるだけのお金」が必要だと感じ、経営者になることを決めました。
大学卒業後に就職をして、飲食店で店舗経営を学び、独学でWebサイトの制作などを学び、2014年に株式会社Lean on Me(リーンオンミー)を創業しました。
株式会社Lean on Meの理念は、「障がい者にやさしい街づくり」です。
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プロのテニス選手を目指すことをやめた理由はなんですか?
志村駿介
大阪からインターハイに出たあとに(18才のとき)、錦織くんがいるアメリカのアカデミーに行ったときに、僕は全国レベルだからと自信をもって行ったのですが、当時13才くらいの背の小さな少年にボコボコにされました。そこで、日本が小さな島国だということに気づかされ、日本でプロ活動をしても世界で通用するレベルになるのは難しいとわかり、アメリカに拠点を置いてやる選択肢もあったのですが、母と弟を置いて日本を出るのにためらい、やめました。
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『母と弟を置いて日本を出るのにためらい』というのは、母子家庭だったからですか? そうだとすれば、親目線ですと、非常に物わかりの良いきょうだいですね。
志村駿介
そうですね。その背景をもっと深掘りすると、父の家庭が障がいへの理解がなく、弟が生まれてしばらくしてから離婚していたことと、母方の祖母も少し変わった人間で、世間体ばかり大事にする人なので両親が離婚してからもMRの仕事をしていた父の味方をしていました。
志村駿介
ですが、母が落ち込んでいて、母一人にプレッシャーをかけることにためらいがありました。
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それは小学生の志村さんにとっては、とてもショックな出来事でしたね。当時、志村さんは相談する相手はいたのですか?
志村駿介
僕には相談相手はいませんでした。
当時、家庭内別居をしていたので父の食事を僕が部屋まで運んだり、両親が喧嘩しているときは弟を守っていたり。友達にも言えなかったですね。父方の祖母や母方の祖父母から、両親の仲を戻すために僕にずっと頼られたりしていて、一度だけ母方の祖母に助けを求める気持ちで相談したのですが、逆効果になりそれ以来相談して良いことは無いなと感じてました。
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とても辛い状態でしたね。そんな状態で、お母さんを助けたい、ということが一番だと思いますが、その時に形成された考えでいまもつながっていることはありますか?
志村駿介
当時は早く大人になりたいとか自立したいとかをすごく考えていたと思います。
一番当時の経験で今生きていることは、僕が弟と過ごす時間が多かったので、(当時の)弟は「お腹が空いた」とか「トイレいきたい」とかを言葉で言えなかったので、僕が表情とか仕草とかを見てわかってあげる必要がありました。
その結果、学校に行っても無意識でその傾聴?みたいなことを友達にもやっていて、「この人は今の言葉に傷ついてたな」とかがわかるようになりました。今でも先輩や周りの人が喜びそうなことや気にしていることなどがすぐにわかるので、コミュニケーションをとる上でとても重宝しています。
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なるほどなるほど、非言語(ノンバーバル)コミュニケーションが身についたのかもしれませんね。
志村駿介
そういうのがあるのですね!
なんか部活やってたときも、「いま先輩が見てるな」とか怒られる前にわかったりしてました。笑
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それは貴重なスキルですね
志村駿介
はい、あまり怒られずに学生生活を過ごすことができました。笑
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私は障害のある”きょうだい”の方とお会いして、その障害特性の知識をしっていくなかで、福祉や医療といった世界を目指す人もいました。
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志村さんが大学卒業後に就職をして、飲食店で店舗経営を学び、独学でWebサイトの制作などを学び、2014年に株式会社Lean on Me(リーンオンミー)を創業したのは、どういった志向なのでしょうか。
志村駿介
大学3年生のときから、「お金持ち」になる必要性を感じていてお金の勉強を始めました。
学生時代は体育会系でテニスしかしていなかったので(受験もせずに推薦で進学)、経営について学ぶためにも(一度社会に揉まれるためにも)就活をしてお金の勉強ができるところを探しました。銀行・証券会社などいろいろ受けましたが就職氷河期ということもあって飲食店の経営しか就職できませんでした。
志村駿介
当時、静岡で勤務していたのですが1年半ほど勤めて店舗責任者で2店舗目を経験した頃に祖父が認知症になり、母親一人では負担がかかるとのことで(一通り経営の勉強もできていたので)退職して帰阪しました。そのあとに母が勤める障がい福祉サービス事業所(生活介護・短期入所・居宅介護)で人が足りないということで手伝いがてらにアルバイトで入ったときに、「研修がない現状」をみて課題認識を持ちました。
その後は、障がい福祉でお金を稼ぐというのが全くイメージできなかったのでWebで稼いで福祉で使おうというコンセプトで地域の飲食店さんなどのWebサイトを作るWeb事業をスタートしました。しかし、Web事業も後発組だったので生活費くらいしか稼げず、資金調達をして現在の事業をスタートしました。
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株式会社Lean on Me(リーン・オン・ミー)は、以下の2つの事業展開とのことですが、簡単にどのような事業なのかを教えてください。
志村駿介
障がい福祉専用 eラーニング研修「Special Learning」

いま社会に必要な障がい福祉の知識をスマホで学べるサービスです。
主に、知的障がいや発達障がいのある方を支援する方が、どのように彼らを支援していけば良いのかを体系的に学習することができます。
障がい福祉サービス事業所では、「人手不足」や「長時間のサービス形態」が原因で研修ができず、不適切な支援や虐待が起きやすい環境にあることに課題を感じました。
そこで、10分程度のスキマ時間で研修の受講ができるeラーニングを活用して、適切な支援ができるような環境づくりに貢献しています。
Special Learningの目的は、事業所の支援水準の底上げと、「障がいのある方への配慮の仕方の認知度を向上」させることにあるため、現在は障がい者雇用をしている企業にも広げています。
料金体系は、初期導入費が64,000円(税別)で、月額利用料が従業員一人あたり1,500円(税別)です。現在5法人に導入し、440名のユーザーがいます。

志村駿介
知的障がい者テニス教室「Special Tennis」

障がいのある方の保護者さまから、「(知的障がいのある方が)運動できる場所が少なく、家でエネルギーを発散してしまう」と相談を受けました。そして、同じ時期にテニスクラブのオーナーから「コートが空いているのがもったいないので何かできないか」と相談を受けました。
そこで2016年10月に知り合いのプロテニスプレーヤーや障がい者支援者に声をかけて知的障がいのある方のテニスイベントを開催したことが発端で、月に1回のペースで開催しています。
テニス用具はクラウドファンディングで集め、参加者は中学生以上の知的障がいのある方が毎月15名ほど来られます。
1回の教室が45分で、参加料は1500円(税別)です。

DS21.info
創業は2014年ですが、この4年間で経営者として、きょうだいとして、ご自身の心境に変化があれば教えてください。
志村駿介
事業を開始する前は、漠然と「自分にしかできないことをやりたい」と考えていました。
そこで、「自分が生まれてきた理由」など自分の人生を振り返ったときに「ダウン症の弟」の存在が大きいことに気づきました。
志村駿介
自分は何をされても大概は許せるタイプなのですが、昔から、弟に何かされたときは許せませんでした。そこに自分の軸があることに気づき、「障がいのある方への配慮の仕方を伝える」ことが自分に与えらえた使命だと感じ、事業をスタートしました。
現在、会社は5期目に入りましたが当初の気持ちは一切変わらず活動を継続しており、最近では大阪府のベンチャー企業として経営者仲間もたくさん増え、社会と障がい福祉の架け橋になれるポジショニングが築けています。
DS21.info
大変興味深いですね。では最後にダウン症のあるきょうだいを持つ方へメッセージをお願いします。
志村駿介
僕はダウン症の弟がいたおかげで、経営者になり自己実現に向けての道をひらくことができました。障がいのあるきょうだいのことを”コンプレックス”と捉えるか、”強み”と捉えるかは紙一重です。これからの時代は障がいのある方が社会進出をどんどんしていく時代なので、地域社会と障がいのある方の間に立てる”きょうだい”の皆さんは社会にとって貴重な存在だと思いますし、きょうだいの存在が”強み”になる瞬間になることと思います。自分のきょうだいが、世界一幸せなダウン症だと言えるようにお互い頑張りましょう!

 

株式会社Lean on Me

障がい者にやさしい街づくり、特別なあなた、特別なまなび、を掲げる志村駿介さんのリーン・オン・ミー。

ぜひサイトをご覧ください。
https://leanonme.co.jp/

 




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