映画『春江水暖~しゅんこうすいだん』心に沁み入る日常の記憶

Posted on 2月 6, 2021 by

 

©2019 Factory Gate Films All Rights Reserved

懐かしい。

この映画を観ながら随所に感じられる感覚。
それは、ああそうだった、こんな感じだったと、コロナ禍前に普通に感じていた日常の喜怒哀楽、その感覚そのものである。

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舞台は中国・杭州市、富陽(フーヤン)。

大河、富春江が流れる。しかし今、富陽地区は再開発の只中にある。顧<グー>家の家長である母の誕生日の祝宴の夜。老いた母のもとに4人の兄弟や親戚たちが集う。その祝宴の最中に、母が脳卒中で倒れてしまう。

認知症が進み、介護が必要なった母。「黄金大飯店」という店を経営する長男、漁師を生業とする次男、男手ひとつでダウン症の息子を育て、闇社会に足を踏み入れる三男、独身生活を気ままに楽しむ四男。恋と結婚に直面する孫たち。変わりゆく世界に生きる親子三代の物語。

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メガホンをとったグー・シャオガン監督は最初、故郷が変化する瞬間を残したいと思ったそうだ。
そして中国山水画の傑作「富春山居図」からインスピレーションを受け、監督の親戚や地元の知り合いをキャスティング。

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DS21.infoの注目はシングルファーザーの三男・ヨウジンと彼の息子・ダウン症のあるカンカンである。

正直なところ中国映画でダウン症のある人が出ていると聞いて驚いたが、観賞後、この作品がカンヌ国際映画祭批評家週間クロージングに選ばれたのも納得できた。

カンカンの出演は一部であるが、彼と家族の自然な関係性は、この街で繰り広げられる群像劇に現代的な奥行きを与えているのだ。
自然豊かな街の再開発が進む中、カンカンも中国の変化を感じているのかもしれない。

いまを生きる富陽(フーヤン)の人々は、私たちの心に沁み入る日常の記憶を思い出させてくれる。
休日にゆっくり味わいたい作品だ。

『春江水暖~しゅんこうすいだん』
2020年2月11日(木・祝)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

≪作品データ≫
監督・脚本 : グー・シャオガン|音楽 :ドウ・ウェイ|出演:チエン・ヨウファー、ワン・フォンジュエン|中国映画 | 2019 年 |150 分|字幕:市山尚三、武井みゆき|字幕監修:新田理恵|配給:ムヴィオラ

公式サイト:http://www.moviola.jp/shunkosuidan/

 

 

 




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