糸賀一雄の熱いスピリッツ

Posted on 6月 19, 2014 by

itogakazuo

2013年3月30日、糸賀一雄生誕100年記念式典が行われ、その式典で大江健三郎氏の記念講演もあったとの新聞記事を読みました。

糸賀一雄氏とはどんな人なのだろう、と手に取ったのが書籍「復刊 この子らを世の光に―近江学園二十年の願い」。

今で言うインクルーシブ教育、職業訓練、企業就労、グループホームなどをミックスさせた障害児者の民間施設のパイオニア、糸賀一雄氏。
同時代の動きとして「西の糸賀(近江学園)、東の小林(島田療育園)」と言われているそうです。

何事も理想があって、熱い!そして困難を乗り越え実現していく。
糸賀氏が熱い志しを持ったメンバーと出会い、語り合い、理想に向かって突っ走った記録です。

昭和22年の近江学園の設立趣意書が素晴らしいです。

インクルーシブな教育の根源と同じものが、日本独自の土着や教育者としての経験、理念から発想されています。

二部生にすることをうたい、第一部を戦災孤児、生活困窮児、第二部を精神薄弱児。
「ところでそのように頭の悪いものと、そうでないものとを同じ学園に入れて、うまくやれるだろうかと心配される方があるかも知れません。
勿論両方をいっしょにまぜて授業したりしてはうまくゆく筈がありませんので、これは分けてやらねばなりません。しかし作業だとか遊びの時などは一緒になります。ここでは頭のいい子は難しい仕事を、頭の悪い子はやさしい仕事を受持って、それぞれ自分の持前を生かしながら、お互いに扶け合っていくという精神を養うのであります。これはなかなかむづかしいことでしょうが、うまく指導すれば出来ない筈はないので、教育もここまで行かなければならないのではないかと思います。」

また、事業資金についても寄付や助成だけではなく、なるべく自らの学園で生産するものから調達できるようにするべきだ、という力強いメッセージも熱い。

「これからの社会事業家は何でもかんでも人に頼ってゆくという気持ちではなく、出来るだけは自分たちの力で自営して行くという気魄を持たなければならないと思います。でないと外部の変動によっていつも学園の運命が左右されているようなことでは、落ちついて仕事も出来ず、収容されている子供たちも気の毒であります。」

糸賀氏は仲間と意識のすり合わせをして、理想をみいだしていきます。
障害児教育については近江学園の共同創設者である田村氏によるインスパイアが強いと思いますが、この田村氏はユニークで、元々は優秀児教育の専門家。
「特別学級」は秀才の教育だと思って教室に入ったら愕然として腹を立てるのですが、それから精神薄弱児のとりこになります。その後、東京の視察をしにいったら、IQ50以下の子供が特殊学校の現場にいくといない。なぜなのかを周囲の教師に聞くと、学級全体の成績が下がるし、就職も難しいので、やり甲斐ないんすよね、と。
それを聞いた田村氏は、ならば俺がやってやる!、という流れです。

かなり泥臭くて、いまでは考えられないような言葉、表現もあり刺激的ですが、パイオニアの熱い精神に触れることができる良書です。

・kindle版

 




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