20分の1の確率から羊水検査へ、そして母の決断

Posted on 1月 11, 2011 by

イギリスの国民的人気ドラマシリーズ「エマーデイル(Emmerdale)」。
ゾー・ヘンリー演じるローナは
妊娠中にお腹の子どもがダウン症であると医師から告げられたとき、悲嘆に暮れました。
翌日の夜までにある決定をしなければならなかったからです。
それは赤ちゃんを中絶するべきか、生むべきか……。

『ローラの決断』

スコットランド在住のローラ・トレイナー(35歳)にとって、このTVドラマはある辛い記憶を思い出させます。
彼女自身もまた、妊娠20週で息子がダウン症だとわかったのです。

ローラは言います。
「クリスマスプレゼントをラッピングしているとき、病院から電話がかかってきました。
羊水検査でダウン症の陽性結果が出たので、中絶するか生むかを夫婦で話し合ってから結論を連絡してほしいというのです。
ですが、すでに夫婦の結論は出ていました。
わたしたちはお腹の中の子どもを、すでに家族の一員として愛していましたから。
だからわたしは姉に打ち明けました。”将来どうなるかはわからないけれど、産むことに決めたよ”、と」

『出生前検査から羊水検査へ』

ローラはすでに2回の出産経験がありましたが、
ライアンを妊娠している15週目で出生前検査を行なったところ、
ダウン症の確率が20分の1だとわかり、とても心配になりました。

ローラは言います。
「わたしの年齢では特にリスクが高かったのです。
母にこの確率について話すと、きっと違うから大丈夫だと慰められましたが、
わたしには“20分の1”に選ばれたのだ、という感覚がなぜかありました。
家族計画として子どもは3人欲しいと最初から決めていましたが、
その考えが、悪い結果をもたらしませんようにと願っていました」

「出生前検査の結果を聞きに行った日のこと。
助産婦がティッシュボックスを手に、小さな部屋へわたしを連れて行きました。
そこには正常な染色体構造の写真と、ダウン症の染色体構造の写真が貼られています。
助産婦はわたしに、”今日は一人なの?”と尋ねました。
“はい”と答えると、”ほんとうに一人で大丈夫?”とさらに聞いてきます。
“ええ、大丈夫です。告知を聞いても、わたしは落ち込みません” そうわたしは答えました」

その後、出生前検査で20分の1の確率であることが医師から告げられ、
ダウン症であるか確実に知る唯一の方法は羊水検査であると説明されました。
そして12月13日、ローラはグラスゴーの病院で羊水検査を受けることになります。
羊水検査の針が入ると、彼女は超音波の画面で、赤ちゃんが動き回り、手を顔にあてている姿を目にしました。
それからちょうど24時間後。
赤ちゃんがダウン症と判明したという、電話がかかってくるのです。

2007年のクリスマスについて、ローラは辛かったと認めています。
「妊娠や出産は、科学で説明できるものではありません。
たとえ問題なく出産したとしても、2、3年後に何か問題が起こることだってあるのです。
だからといって、中絶を選んだ人を決して非難しません。何もかもが心配なのはよくかわります。
自分の目の前で何が起きるかを知っている人はいませんから。
わたしの場合は、羊水検査をすることで何が起こるかを知りたかったのです。
心の準備をするために知りたかったのです。
事実を知ることで、その気持ちに対処し、前に進むことができました」

『決意から3年』

現在、ダウン症の息子ライアンは2歳。まわりからとても愛されています。
ローラと夫ケビン(42歳)はグラスゴーの近くに住み、二人はあのときの決断を後悔していません。

ローラは2010年のクリスマス準備を、兄弟のクロエ(11歳)、ロス(7歳)たちとしています。
兄弟たちは自分たちが勇敢な少数派であることを分かっています。
(イギリスでは毎日ダウン症の3人の赤ちゃんが中絶されています。
妊娠女性のうち92%はダウン症であれば中絶すると決めているのです)

スコットランドのダウン症協会は、兄弟たちの理解の助けになればと本を貸してくれました。
しかし、クロエとロスは思いのほか簡単に、兄弟の障害を受け入れてくれました。

ローラは言います。
「クロエがわたしに聞いてきました。
“なんでお母さんは泣いてるの? お母さん、わたしは大丈夫だよ!”
クロエはライアンがダウン症であることを理解してくれました。
ロスはライアンと一緒にサッカーはできるかと聞いてきました。
二人の通っている学校も、支援してくれました」

みんなが協力的でいてくれたおかげで、
ローラがライアン(体重3650g)の泣き声を初めて聞いたとき、安心感に満たされていました。

出産後、病院側は迅速にライアンの健康チェックを行ない、
ローラの腕にライアンを戻しました。
ローラはライアンを近くに抱き寄せ、無言で”ずっと一緒だからね”と約束しました。

彼女は言います。
「腕に息子を抱いたとき、出産前の心配は消え去りました。
ダウン症の子どもを産もうとしている方にぜひ伝えたいのは、怖がらないでほしいということです。
あなたが考えるほど、悪いことは起きません。
わたしたち夫婦は最悪の状態に備えましたが、そんな必要はありませんでした。
ダウン症の子を産み、育てることは自分をより強い人間にすると思います」

当初、家族はダウン症の赤ちゃんを世間に知らせることに抵抗がありました。

ローラは言います。
「ダウン症の赤ちゃんを妊娠していることは、近親者か仲の良い友人に話すだけでした。
ライアンをつれて買い物に行くと、ある家族がじっとわたしたちを見ていて
小さな女の子がライアンを指差して親に質問する、なんてこともありました」

2歳のライアンはまだ12縲鰀18ヶ月の服を着ており、ほかの子どもたちよりゆっくり育っています。
しかし、9ヶ月でお座り、15ヶ月でハイハイ、2歳の誕生日直前には歩きはじめました。

ライアンは週に数回、保育園へ通い、マカトンサイン(注1)を学んでいます。
父親のケビンは誇らしげに写真を見せて言います。
「ライアンは、茶目っ気たっぷりです。とても自然な表情でしょう。
幸せな三人の子どもたちに恵まれて、わたしたち家族は本当にラッキーです。
日常で息子をダウン症だと意識することはほとんどありません。
写真を冷静に見ると、あぁダウン症だなと思いますが、
ダウン症の特徴よりも、息子の表情にわたしたちの愛が反映されていることが何より嬉しいです」

注1)
マカトンサイン…ことばや精神の発達に遅れのある人の対話のために、イギリスで考案された手話法をルーツにしたコミュニケーション法。

ニュースソース:Soap story’s real-life for us but we’ve never regretted having a baby with Down’s

■参考URL
マカトン法によるコミュニケーション

 




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