ダウン症は私たちを傷つけましたか?

Posted on 10月 17, 2011 by


「障害児の子育て」というジャンルで著名な女流作家エイミー・ジュリア・ベッカー。
NYタイムズなどで活躍するコラムニストでもあります。
3人の子どもの母であり、長女のペニーはダウン症です。
彼女の素晴らしいコラムをご紹介します。

ダウン症は私たちを傷つけましたか?
(HAS DOWN SYNDROME HURT US?)

ある雨の日。
長時間の車の旅行で、子供たちの寝る時間が近づいたころ、
子供たちは「自分たちが生まれたときの話をしてよ」とせがみました。
いままでもこの話はしているので、よく知っている話です。
息子ウィリアムの頭はとても大きく、(冗談で)お医者さんが掃除機で頭を引っ張り出したんだよと説明すると子供たちはクスクス笑います。
娘マリリーの出産はとても時間がかかったこと、
3人の子供の出産では毎回、病院で気分が良くなる薬を使ったことなどを話しました。
子供たちは私が医者を呼ぶ前、パパとママ(私)が娘ペニーの部屋の準備に3時間かかったことを知っています。
しばらくペニーの話をしましたが、細かい説明はしませんでした。
ペニーが生まれて2時間の間に起ったことは話しませんでした。
(その2時間に起きたことは)看護師が夫を呼び、部屋の外へ連れ出し、戻ってきたときには目が涙でいっぱいだったこと、
看護師から「ペニーはダウン症かもしれません」と言われたとき(とっさに)私が理解できなかったことです。

今年始め、私とペニーで二人っきりのとき、再び生まれたときの話をしました。
ペニーが生まれたときは単純に子供が生まれて嬉しいというだけの時間ではなかったことを伝えようと決めました。
いつも話しているような家族の話を終わらせ、最後にこう付け加えました。
「あなたが生まれた後、お医者さんはダウン症かもしれないと言ったので、ママ(私)は怖かったの。」
娘は頭を近づけて聞きました。
「ママ、なんで怖かったの?」
私は答えました。
「ダウン症があなたのことを傷つけると思ったので、ママは怖かったの。」
そして、一呼吸おいて、本当のことを話しました。
「それでね、ママは自分も傷つくと思ったの。」
娘は何かを真剣に考えている時の表情で言いました。
「ああ、そういうことね」

この話をした後、私が(出産で)病院にいた時のことを思い出しました。
娘ペニーを腕に抱いて、怖れ、悲しみ、怒り、様々な感情が押し寄せていた頃です。
娘のふっくらした頬を見つめ、いつかこの悩みがなくなる日がくると信じたあの日。

5年が経ち、その日がきました。
幸い娘には大きな合併症もなく、身体的な不安はなくなりました。
ダウン症の子どもを持つことで、健常児では得られないような周囲の仲間の素晴らしさを学ぶことができました。

まだ、ペニーに話していないことがあります。
世間一般ではダウン症候群の認識が低く、私たちを傷つけることがある、ということです。
それは2つあります。

1つはダウン症のある人が「可愛くて愛すべき天使」であるという安易な見解。
この認識によりダウン症のある人が経験できる人間的な感情とニーズが限定されてしまい、
(ダウン症のある人)個人から人間性を奪うことがあります。
例えば私がペニーを生んだとき、
周囲の人は(病室の私に)よく言いました。
「神は特別な親に特別な子どもを与える」
この言葉は私にとって苦痛でした。

私にとってダウン症候群は子育てのリトマス試験でした。
隣の病室にいる子どもを産んだばかりの女性よりも私のほうが(ダウン症の)自分の子どもについて何も知らず不安な状態であることを知っていました。

2つ目はダウン症のある人は世の中にいないほうがいいという世間の認識です。
現在、ダウン症の子どもを産む女性の大部分は出産するまで子どもの染色体を知りません。
妊娠中の女性の2パーセントが、羊水検査や絨毛検査によりダウン症や他の染色体異常の診断を求めます。
そして異常があると判明した90パーセントの女性が中絶を選びます。
また、出生前検査の進歩により、98パーセントの精度で妊娠9週目に母親の血液検査によりダウン症の診断ができるようになりました。
私を悩ませるのは検査そのものではなく、検査が赤ちゃん誕生の準備の目的ではなく、中絶の判断目的となっていることです。
そこにはダウン症のある人の命が生きるに値しない、またはダウン症の子どもを持つ家族や社会が重荷になるという考えがあるのです。

この秋、ペニーは幼稚園に通いはじめます。
本を読んだり、遊んだり、色を塗ったり、コンピュータを使って感情表現することを学ぶことでしょう。
洗濯ものをたたんだり、テーブルの準備をしてくれたり、私が食事の支度をしているときに妹を笑わせたりしてくれるようになるでしょう。
また、その過程で私が悩むことがあるかもしれません。

2、3ヵ月前、ペニーが生まれたときの話しをしたとき、
私は言いました。
「だけどね、ダウン症はあなたを傷つけなかったの。
家族みんなも傷つかなかったのよ。
だから、私たちはもうダウン症を怖がる必要はないの。」
娘は言います。
「じゃあ、ママはしあわせってこと?」
私は腕を伸ばし、娘を抱きしめました。
「あなたが私の娘で本当によかったわ!」

ニュースソース:Has Down Syndrome Hurt Us?

 



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